「パートさんには賞与は出さない」
「契約が短いから待遇差は当たり前」
…こうした言葉、現場で何度も耳にしてきました。
でも、それって本当に大丈夫でしょうか?
実は、この“ちょっとした思い込み”こそが、会社を静かに危険に近づけてしまうんです。
今日は、経営者の方がつい陥りやすい 5つの勘違い を整理してみましょう。
勘違い① 「パートだから賞与なしでいい」
これは…かなり危ういです。
判例では「賞与の性質」が重視されます。
もしそれが“労務の対価”と見なされたら、パートさんや契約社員にも支給義務があると判断されます。
フルタイム勤務なら、さらにリスクは高まります。
「パートだから」は理由になりません。 むしろ、「同じ仕事をしているのに賞与がない方」が不合理とされる時代です。
勘違い② 「契約期間が短いから待遇差をつけても大丈夫」
これはいいえです。
裁判所は“期間”ではなく“実態”を見ます。
更新を何度も繰り返していれば、実質的には「無期契約」と同じ扱いになります。
形式じゃなく、現実でどう働いているかが問われるんです。
「半年契約だから安心」と思っていたら、それは勘違いです。
更新を重ねるほど、リスクは静かに積み上がっていきます。
勘違い③ 「正社員と非正規はまったく別物」
違うのは“呼び名”だけ。
仕事内容が同じなら、「同一労働同一賃金」の対象になります。
裁判では、肩書きではなく「実際に何をしているか」で判断されます。
名刺より、現場がすべて。
つまり――「肩書きで守られる時代」はもう終わっているんです。
勘違い④ 「手当は会社が自由に決めていい」
確かに会社が設計できます。
でも大事なのは「手当の目的」をきちんと説明できるかどうか。
たとえば生活を支えるための手当なら、雇用形態に関係なく必要です。
技能評価を目的とするなら、同じスキルを持つ人には全員支給するのが合理的。
「正社員だからある」――では、もう通用しません。
勘違い⑤ 「うちは小さい会社だから大丈夫」
本音で言うと、むしろ小規模企業ほど狙われやすいです。
- 就業規則や制度がまだ整っていない
- 人手不足で声が上がりやすい
- SNSでの炎上リスクが大きい
大きな会社よりも、小さな会社の方が「一人の声」で動く時代。
だからこそ、“早めの整備”がいちばんのリスク対策なんです。
業種別「よく燃える場所」
製造業:
- 夜勤手当の支給要件(時間帯・回数・按分)
- 危険作業の定義と手当支給基準
- 技能等級の評価表(雇用形態共通運用)
- 精皆勤手当の支給基準
サービス業:
- 接客手当の客観的支給基準
- 売上手当の貢献度評価方法
- シフト制での公平な待遇
- 管理業務の実態に基づく店長手当
IT・事務職:
- 職務内容の客観的な差異
- 資格手当の雇用形態別格差
- 在宅勤務手当の支給基準
- 残業代計算の統一性
“燃えやすい”のは、人ではなく制度のあいまいさです。
境界線があやふやなまま放置していると、思わぬところで火がつきます。
今日からできる「初動対応」3ステップ
ステップ1:手当の棚卸し
- 全ての手当について「支給目的」を一行で書き出す
- 「なぜこの人には支給して、あの人には支給しないのか」を明文化する
- 説明できない手当は、見直し対象として整理する
ステップ2:職務分析の実施
- 正社員と非正規の業務内容を詳細に比較・分析
- 責任の重さを客観的に評価
- 配置転換の可能性や期待される役割を明確化
ステップ3:制度設計と説明準備
- 待遇差の合理的理由を文章で明確にする
- 手当ごとの支給目的・趣旨を整理
- 従業員への説明資料やQ&Aマニュアルを整備
この3つを回すだけで、トラブルの8割は防げます。
一人で抱え込まないでください
安定って、実は止まっている状態じゃないんです。
自転車が安定するのは、ペダルをこぎ続けているときだけ。
制度も同じで、動かし続けている会社だけが倒れない。
私たち社会保険労務士は、業種を問わずたくさんの企業をサポートしてきました。
あなたの業界の特性を理解しながら、法的リスクを避ける最適な方法を一緒に探します。
同一労働同一賃金の不安、整理してみませんか?
まずは現状を「見える化」することから。
その先の制度設計や導入支援は、ご希望に応じてご提案いたします。
あなたが一人で悩む必要はありません。
私たちは、あなたの不安に寄り添いながら、一緒に前に進む伴走者です。 何かご質問やご相談があれば、いつでもお声がけください! あなたの会社の発展を心から応援しています✨
※本記事は一般的な情報提供です。個別の事案については、実際の事実関係により判断が異なります。


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